温度マッピングの落とし穴と指摘事例
指摘事例1:空荷のときしか測定していない
温度マッピングの基本として、倉庫や保冷庫の温度分布を測定します。ここで非常によくある指摘が、「庫内に何も入っていない状態(空積載:OQ)でのみマッピングを実施し、実際の運用状態(実積載:PQ)でのデータがない」というものです。
医薬品の段ボールが庫内に満載されると、冷気の流れ(エアフロー)が遮られ、空荷のときとは全く異なる場所にホットスポット(温度が高くなりやすい場所)が発生します。実際の運用を想定した実積載マッピングが欠如していると、データの信頼性が不十分として重大な不適合とみなされます。
指摘事例2:季節のワーストケースが考慮されていない
「昨年10月にマッピングを行い、規定の2〜8℃に収まっていたため良しとした」というような、気候変動を無視した検証も指摘の対象となります。
日本の過酷な気候を考慮した場合、外気温が最も高くなる「真夏(8月)」と、最も低くなる「真冬(1月〜2月)」の双方でマッピングを実施し、最も過酷な環境下(ワーストケース)でも庫内温度が維持できることを証明しなければなりません。
指摘事例3:日常モニタリングのセンサー位置が不適切
マッピングを実施したこと自体で満足してしまい、その結果が日常の温度管理に活かされていないケースです。
マッピングの最大の目的は「最も温度変化のリスクが高い場所(ホットスポットおよびコールドスポット)」を特定することです。日常モニタリング用の温度記録センサーが、マッピングで特定されたワーストポイントではなく、「作業員が見やすい目の高さ」や「設置しやすい壁際」などに便宜的に設置されている場合、監査員から「適切なリスク管理がなされていない」と厳しく追及されます。
温度マッピングは「一度データを取れば終わり」の作業ではありません。荷物のレイアウト変更や空調設備の経年劣化によっても温度分布は変化するため、定期的な再評価(原則1〜3年ごと)の手順をSOPに組み込んでおくことが、指摘を防ぐ最大の防御策となります。
作成 :薬剤師 菅沼一茂
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