医薬品GDP すべての意思決定の土台:品質リスクマネジメント(QRM)
こんにちは。
PIC/S GDPにおいて最も重要視され、あらゆるルールの根底に流れる哲学
「品質リスクマネジメント(QRM)」について考えたいと思います。
「念のため」から「科学的根拠」へ
これまでの物流現場では、「過去にトラブルが起きたから」「経験上、こうしておけば安心だろう」といった、勘や経験に基づく対策が少なからず存在しました。
しかし、現代のGDPが求めるQRM(Quality Risk Management)は、医薬品の品質に対するリスクを「科学的かつ体系的」に評価・管理するプロセスです。これは単に「気をつける」ことではなく、限られた資源(人・時間・コスト)を、最も患者への影響が大きいリスクに対して論理的に集中配分するためのツールでもあります。
QRMを構成する4つのステップ
QRMは、国際ガイドライン(ICH Q9)に則り、以下の4つのプロセスを循環させながら進められます。
- リスクアセスメント(評価) サプライチェーンに潜むリスクを洗い出します。
- 「何が起こり得るか?(例:夏場の渋滞でトラック庫内の温度が上がる)」
- 「起きる確率は?(発生頻度)」
- 「起きた場合、製品品質や患者にどれほどの被害が出るか?(重大性)」
- 「異常が起きたとき、すぐに気づけるか?(検出性)」 これらを数値化し、どのリスクを優先して対処すべきかを可視化します。
- リスクコントロール(制御) 評価したリスクに対して対策を打ちます。「許容できるレベルまで下げる(低減)」か、「影響が極めて小さいためそのまま受け入れる(受容)」かを決定します。(例:渋滞リスクに対し、パッシブ保冷ボックスを導入してリスクを低減する)
- リスクコミュニケーション(情報共有) 特定されたリスクと決定した対策を、自社内だけでなく、製薬企業や委託先の運送業者など、サプライチェーンに関わるすべてのステークホルダー間で共有し、認識を合わせます。
- リスクレビュー(見直し) 対策を打って終わりではありません。定期的な監査やトラブル発生時に、「設定した対策は本当に機能しているか」「新たなリスクは生まれていないか」を振り返り、継続的に改善(CAPA)へと繋げます。
「ゼロリスク」を目指すことの罠
QRMを運用する上で陥りがちなのが、「とにかくすべてのリスクをゼロにしよう」としてしまうことです。しかし、現実の物流において完全なゼロリスクは不可能であり、非現実的で過剰な対策はコストを圧迫し、最終的には医療費の高騰として社会に跳ね返ってしまいます。
QRMの真の目的は、「患者の安全性への影響」を絶対的な判断基準とし、科学的なデータに基づいて『受け入れ可能なレベルまでリスクをコントロールすること』にあります。
倉庫の温度マッピングをどこで行うか、どの輸送ルートを選ぶか、どのような保冷容器を採用するか。GDPに関わるあらゆる意思決定は、このQRMの評価結果を根拠として行われなければなりません
作成 :薬剤師 菅沼一茂
丸総が実現する「流れ続ける物流」
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