医薬品GDPと記録の信頼性を守る:データインテグリティ(DI)の重要性
こんにちは。
今回はデータインテグリティ(データの完全性)について考えたいと思います。
データインテグリティ(DI)とは何か?
データインテグリティ(Data Integrity: DI)とは、医薬品の品質や安全性に関するすべての記録が「完全で、一貫性があり、正確である」ことを保証する概念です。
医薬品GDPの基本原則は「記録がないものは、実施されていないのと同じ」ですが、近年はそこから一歩踏み込み、「その記録は本当に改ざんされていないか」「都合の悪い温度データが隠蔽されていないか」という、データの信頼性そのものが世界的に厳しく問われるようになっています。
なぜ今、DIが厳しく問われるのか?
背景には、一部の企業による悪質なデータ改ざん事件に加え、物流システムの電子化に伴う新たなリスクの出現があります。
手書きの記録帳から、倉庫管理システム(WMS)やクラウド型温度モニタリングシステムへの移行が急速に進んでいます。その中で、「誰でも数値を修正できてしまうシステム設定」「管理者パスワードの使い回し」「変更履歴(オーディットトレイル)が残らないソフトの使用」などが、重大なコンプライアンス違反とみなされるようになりました。
現場を守る国際基準「ALCOA+(アルコア・プラス)」
データインテグリティを確保し、正しく記録を残すための国際的な基本原則として「ALCOA+」があります。GDP業務においても、温度データ、入出庫記録、清掃記録、教育記録のすべてが以下の条件を満たさなければなりません。
- A (Attributable – 帰属性): 誰が、いつ、そのデータを作成・変更したかが明確であること。共通IDやパスワードの使い回しは厳禁です。
- L (Legible – 判読性): データが読み取れる状態で、長期にわたり保存・閲覧可能であること。消えるボールペンの使用や、年月が経つと文字が消える感熱紙での保存は不適格とされます。
- C (Contemporaneous – 同時性): 作業を行ったその瞬間に記録されていること。後日のまとめ書きや、記憶に頼った入力は認められません。
- O (Original – 原本性): 最初に行われた記録が「原本」として保存されていること。現場のメモ帳に書き留め、後から綺麗な用紙に清書する行為は、原本性の喪失(書き間違えや意図的な改ざんのリスク)とみなされます。
- A (Accurate – 正確性): エラーがなく、真実を正確に反映していること。
※これらに「完全性」「一貫性」「永続性」「利用可能性」を足したものがALCOA+と呼ばれます。
どれほど最新鋭の保冷庫や厳重なセキュリティシステムを導入していても、それらを運用する「記録」が信用できなければ、GDPの品質保証システム全体が砂上の楼閣となってしまいます。デジタル化が進むこれからの物流現場において、DI対応は避けて通れない必須要件です。
作成 :薬剤師 菅沼一茂
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